退役状態の私だが、ひょんなことで 情報処理学会と共同開催 言語処理学会第16回年次大会(NLP2010) の前夜祭、チュートリアルに行ってきた。
講聴したのは、推薦システム -機械学習の視点から-
( 神嶌 敏弘 氏 ) 、ALAGIN フォーラムの活動
( ALAGIN より若手研究者3人 ) 、「現代思想」と言語 -脳、認知から遠く離れて-
( 影浦峡 氏 )
スリリングでインタレストな一日だったよ、いやもう本当に。
リコメンドシステムの話では、心の叫びが口から飛び出しそうになって、声帯だけは使わずに耐えたが、何人かにはチャチゃとして聞こえたんじゃないかな。EC / Web 開発の現場を離れて2年以上になるのに、知った顔と会って挨拶されるしね。最後のコマに至っては、質問をしたら哲学者の先生に 中川先生
と (胸の外来タグを読んで) 言われてしまった。俺はソシュールとラカンとフーコーの区別も怪しい、一介の技術者。実用の徒だ。
スリリングすぎるネタの話はその辺にして、真面目な感想を書こうか。
リコメンドシステムの話を聴いて
隣席の若い男が、数式を言葉に翻訳したほかは全く資料そのままのメモを、パソコンに Mule で書いていたな。
全般に、聴講者がそんな感じ。資料を調べるなら、わざわざ身体を運ばなくても事足りるんだよ。ここに来て、人間から話を聴くことで、君は何を受け取りに来たのかと激しく糾弾したい。
私が触発されて考えはじめたのは、EC は何のためにリコメンドシステムを作成するのか
という戦略。ソムリエ問題
という名称が思い浮かんだ。
アマゾンのように、ロングテイル (裾野需要) を喚起するためにリコメンドするのか。ならば誰でも知っている、メジャーなものは推薦対象から省くべきだろう。それが神嶌氏の言うところの Serendipity -意外性-
の提示、リコメンドからアテンダントへ
という最終の結論につながる道のはずだ。
聴講者のなかに混乱している人がいたが、新規性
は知りたいと思っている事柄の続報、ニュース。意外性
は隣接分野への啓蒙。 ーーだと思う
論文はモデルの美しさを、仮説を競う。現実に対する評価は、利益の拡大で計られる。シェアですらない。
ALAGIN の発表を聴いて
同じ文脈に出てくる単語は、新しい概念として類義語といえる
単純な、ここまでは誰でも思いつくアイデアを、資料を集めさせ、実証するのにどれだけの手間が必要だろう。
門外漢は プログラムしてあとはコンピュータにやらせたのだったら、楽なのではないの
と言う。(いや、私も時々言う。セールストークとして。) でも NICT の人々がこのデータベースを作るのに、40台のマシンを協力して動くように注意深くプログラム組んで、ぶん回して、一ヶ月かかったんだよ。
そのデータを活用するのに、 何回補正作業をしながら、問いなおしをすれば良いか
を決めるのは慣れた人間の勘だと割り切っている。そこが素晴らしい。
質疑応答の時間、若い男がした発言に血圧が上がった。サービスが動き出したら、プログラムからアクセスしたいという需要が見込まれますが、それ用の API は予定されないのですか ?
API を用意しろとほざく前に、アクセスするプログラムを、負荷が迷惑にならないように書きやがれ。窓口に API という名前がつけば何やっても良いというワケじゃないだろう、バカ者が。
言語学の講義を聴いて
聴講者のほとんどが、みたところ影浦氏の大学の生徒らしくて笑った。
はい、論文の一つ (次女たち
) を読んでおいてねと書いてあったから、図書館に行って フーコー全集
( 全7冊 だったかのうちの2冊と、解説本 / ちくま学芸文庫版 ) をおさらいしましたよ。ざっくり20年弱ぶり、ですかね。
フランス哲学、構造主義。識りません♪ ちょうど世代だけれど浅田彰のベストセラーとか読まなかったし (立ち読みで充分)
私が識っているのは、外国語で書かれた内容を認識するのはおもしろい。言葉のひとつひとつを単純に置き換えるのは翻訳ではない。そして心の動きや体験を言語に直すという作業にも同じ過程が存在する
という、それだけ。
シニフィアン/シニフィエ
という言葉を好んで使う。これはソシュールだっけ (いまやっと調べた) 。
エピスメーテとかアルシーヴとかいう言葉は憶えきらなかったから、近年自分で再発見したときには事象と現実という言葉で表現してきた。
二十代でフランス哲学に出会っていたからエピスメーテを認識できたのか、フランス哲学に出会ったことがなくても自力で発見できたのか。それは誰にも分からない。
2 コメント:
メモ : 10日影浦氏
http://kyokageura.seesaa.net/article/139676770.html
メモ 2 : 同じ時間帯に「Google 日本語入力」
ま、いっか。これは今回でなくても聴ける/読める話だ
http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/taikai/72kai/event/104.html
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